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川庄会計グループ 福岡経理代行センター

2023年04月03日

賃貸物件を贈与 ~負担付贈与に注意を~

令和5年度税制改正により、①生前贈与加算の対象期間が3年から7年に延長、②相続時精算課税制度に110万円の基礎控除を設けること等、相続税おいて大きな改正がありました。

今後は相続対策期間も長くなることから、相続の相談案件が徐々に増加していく傾向があると推測されます。その中でも今回は賃貸物件を贈与する際に注意したい「負担付贈与」について取り上げます。

負担付贈与とは、ローン返済などの債務を引き受けることを条件に金銭や不動産を贈与することで、この債務の内容に法律的な定義はありません。ここでいう「負担付」とは様々な内容があり、「財産を贈与する代わりに、自分を介護してほしい」という条件の負担付贈与もあったそうです。

負担付贈与は、その負担額を財産から差し引いて贈与額を計算します。例えば、2,000万円の現金を贈与して500万円の借金を肩代わりしてもらうケースでは、差額である1,500万円に対して贈与税が課せられることとなります。

では、賃貸物件を負担付贈与する場合の注意点を挙げます。

例えば、アパートを贈与すると、通常の贈与であれば土地は「路線価」、建物は「固定資産税評価額」で評価します。これらの評価額は、売買価額(時価)よりも低い金額となるのが一般的です。しかしこれが負担付贈与であると、不動産は時価で評価するというルールになっています。つまり、負担付贈与で不動産を渡すと、通常の贈与と比べて税金面で極めて不利となります。

また、本人がそう考えていなくても、結果的に負担付贈与になることもあります。例えば、ローン債務の残っていないアパートを子に贈与したとします。一見、何の負担も付いていないように見えますが、もし店子から敷金を預かっていたとすればどうでしょう。敷金は原則として退去時に店子に返還すべきであり、言い換えれば、大家として将来的に敷金相当額を返却する債務を背負っていることとなります。そうなると、税務署から「負担付贈与」とみなされる可能性もあります。例えば店子に返還すべき敷金分の現金を同時に贈与するなど対策を講じる必要があります。

賃貸物件を贈与する際は、当該物件に将来的に債務となるものがないかどうかの確認をし、負担付贈与とみなされないように注意したいところです。

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